「セックスレスだから浮気された」「セックスレスだから浮気しても仕方ない」——夫婦の問題を語る際に、こうした因果関係が当然のように語られることがあります。
しかし、法律上の結論は明確です。セックスレスが浮気の「免罪符」になることはありません。たとえセックスレスが事実であっても、浮気(不貞行為)は不法行為であり、慰謝料請求の対象になります。ただし、セックスレスの事情は慰謝料の金額に影響を与える場合があります。
この記事でわかること: セックスレスの定義と日本の実態、セックスレスと浮気の関係性、慰謝料への法的影響、そしてセックスレスと浮気を同時に抱えた場合の対処法を解説します。
セックスレスの定義と日本の実態
セックスレスの定義
日本性科学会は、セックスレスを「特別な事情がないのに、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」と定義しています。つまり、1ヶ月以上の性的接触がなければ、医学的にはセックスレスに該当します。
日本の夫婦の約7割がセックスレス傾向
2023年にレゾンデートル株式会社が実施した4,000人規模の調査によると、既婚者の**68.2%**がセックスレス傾向にあるとされています。内訳は「完全なセックスレス」が43.9%、「ややセックスレス」が24.3%です。
注目すべきは、結婚3年未満の新婚夫婦でも**51.8%**がセックスレス傾向にあり、そのうち21.9%は完全なセックスレスという点です。セックスレスは長年連れ添った夫婦だけの問題ではなく、婚姻の早い段階から生じうる問題です。
セックスレスの主な原因
セックスレスに至る原因は男女で異なります。男性で最も多いのは「仕事の疲れ」(35.2%)、女性では「性欲の減退」と「疲れ」が上位を占めています。女性の性欲減退には妊娠・出産・育児疲れが大きく影響しており、産後のセックスレスは特に深刻な問題です。産後の夫婦関係の変化については産後クライシスと浮気の実態・対処法で詳しく解説しています。
その他にも、子どもの存在(寝室の共有など物理的な問題)、加齢による体力の低下、パートナーへの性的魅力の変化、コミュニケーション不足など、複合的な原因が絡み合っています。
セックスレスが浮気につながるメカニズム
セックスレスが直接的に浮気を引き起こすわけではありませんが、浮気のリスクを高める心理的要因になることは、調査データからも裏付けられています。
「求められていない」という感覚
セックスレスが長期化すると、拒否されている側は「自分は異性として魅力がないのではないか」「パートナーに必要とされていないのではないか」という不安を抱くようになります。この「承認欲求の欠乏」が、別の異性に承認を求める行動——つまり浮気——につながるケースがあります。
スキンシップの減少が関係の希薄化を招く
性的な関係の減少は、ハグやキスといった日常的なスキンシップの減少にもつながります。身体的な親密さが失われると、精神的な距離感も広がり、「この人と一緒にいる意味があるのか」という疑問が生まれやすくなります。浮気のサインとして「スキンシップの急減」が挙げられるのは、この構造的な問題の表れです。浮気の兆候と心理的メカニズムは浮気のサイン20選|プロの探偵が教える兆候チェックリストで解説しています。
男女で異なる浮気への道筋
セックスレスから浮気に至る心理プロセスは、男女で異なる傾向があります。男性は「性的欲求の充足」が動機の中心になりやすく、女性は「精神的なつながり」や「自分を必要としてくれる存在」を求める傾向が強いとされています。性別による浮気の動機や兆候の違いは夫の浮気と妻の浮気の違いで詳しく解説しています。
セックスレスは浮気の「言い訳」になるのか:法的な見解
セックスレスでも浮気は不法行為
法律上、配偶者以外の異性と性的関係を持つこと(不貞行為)は、その理由にかかわらず不法行為に該当します。「セックスレスだったから仕方なく浮気した」という主張は、法的には認められません。
不貞行為の法的な定義と境界線についてはどこからが浮気?法的・心理的ボーダーラインで解説しています。
ただし、慰謝料の金額に影響する場合がある
セックスレスの事情は、浮気の慰謝料額を減額する方向に働くことがあります。裁判所は、浮気に至った背景事情として以下のような点を考慮します。
- 合理的な理由なく一方的にセックスを拒否していた期間が長い場合:拒否していた側にも婚姻義務の不履行があったとして、慰謝料が減額されるケースがあります
- セックスレスによって婚姻関係が実質的に破綻していたと認められる場合:慰謝料請求自体が認められない可能性があります
東京地裁の判例(平成29年11月20日)では、長期のセックスレスが浮気の背景事情として認定され、慰謝料が減額された事例があります。
セックスレス自体が離婚原因になる
一方で、合理的な理由なく配偶者を長期間にわたってセックスレスにした場合、それ自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として離婚原因になりえます。セックスレスを理由とする慰謝料の相場は100万〜300万円程度とされていますが、婚姻期間やその他の事情によって大きく変動します。慰謝料の一般的な相場は浮気の慰謝料相場と請求の流れで確認できます。
「婚姻関係の破綻」の判断基準
セックスレスだけで即座に「婚姻関係の破綻」が認められるわけではありません。裁判所は以下のような要素を総合的に判断します。
- セックスレスの期間(数年以上が目安)
- 拒否の理由(合理的な理由の有無)
- 拒否された側がどのような対応を取ったか
- 夫婦間のコミュニケーションの状態
- 同居の継続・家事育児の分担状況
「婚姻関係の破綻」と別居中の浮気の関係は別居中の浮気でも慰謝料は請求できる?で詳しく解説しています。
セックスレスと浮気を同時に抱えた場合の対処法
「パートナーとはセックスレスだが、浮気もされている(または疑っている)」という状況は、非常に複雑です。以下の3つのステップで整理してください。
ステップ1:浮気の事実を確認する
セックスレスの状態にあると、パートナーの些細な行動変化に対して過敏になり、実際には浮気していないのに疑ってしまうケースもあります。まずは事実を客観的に確認することが最優先です。
探偵の無料相談では、「この状況は浮気を疑うべきか」「調査すべきかどうか」を客観的に判断してもらえます。各社の対応や実績はおすすめ探偵社ランキングで比較できます。
ステップ2:証拠を確保する
浮気が事実であれば、証拠の確保が次のステップです。セックスレスが背景にあっても、浮気の証拠があるかないかで交渉力は決定的に変わります。証拠の種類と集め方は浮気の証拠の集め方で解説しています。
ステップ3:今後の方針を決める
証拠を確保した上で、3つの選択肢があります。
選択肢A:関係を修復する。 セックスレスと浮気の両方を夫婦で向き合い、根本原因を解決する道です。夫婦カウンセリングの活用が有効です。再構築に成功する夫婦の共通点は浮気を許して再構築した夫婦のリアルで解説しています。
選択肢B:離婚する。 セックスレスと浮気の両方を離婚原因として、慰謝料を請求する道です。セックスレスの立証は難しい面がありますが、浮気の証拠があれば離婚と慰謝料請求の根拠として十分です。
選択肢C:離婚はせず、不倫相手に慰謝料を請求する。 婚姻関係は維持しつつ、不倫相手に対して慰謝料を請求する道です。ただし、セックスレスの事情が相手側から主張されると、減額される可能性があります。
どの選択肢が最適かは状況によって異なります。弁護士・探偵・カウンセラーそれぞれの専門家に相談することで、自分に合った方針が見えてきます。相談先の選び方は浮気の相談はどこにすべき?弁護士・探偵・カウンセラーの使い分けを参照してください。
セックスレスを改善するためにできること
浮気の有無にかかわらず、セックスレスが夫婦関係の不安定要因になっているなら、改善に向けた行動を取ることが重要です。
話し合いのタイミングと伝え方
セックスレスについて話し合う際は、「なぜしてくれないのか」という追及型ではなく、「自分はこう感じている」というI(アイ)メッセージで伝えるのが有効です。ベッドの上ではなく、リビングや外食中などリラックスした環境で切り出すほうが、防御反応が出にくくなります。
身体的な原因の確認
性欲の低下やED(勃起不全)など、身体的な原因が関わっている場合は、泌尿器科や婦人科を受診してください。更年期障害やホルモンバランスの変化、服用中の薬の副作用が原因である可能性もあります。身体的な問題は医療で改善できるケースが多いです。
日常的なスキンシップから始める
いきなり性的な関係を求めるのではなく、手をつなぐ、ハグをする、肩を揉むなど、日常的なスキンシップから段階的に増やしていくアプローチが推奨されています。スキンシップの習慣がない状態で突然性的な関係を求めると、拒否された側のダメージがさらに大きくなります。
専門家の力を借りる
夫婦だけで解決が難しい場合は、夫婦カウンセリングやセックスカウンセラーの利用を検討してください。カウンセラーが中立的な立場で話し合いを仲介してくれるため、感情的な対立を避けながら問題に向き合えます。
よくある質問
Q. セックスレスを理由に浮気したパートナーに慰謝料を請求できますか?
請求できます。セックスレスが事実であっても、浮気(不貞行為)は法律上の不法行為に該当するため、慰謝料請求は認められます。ただし、セックスレスの事情によって慰謝料が減額される可能性はあります。
Q. セックスレスが原因で浮気してしまいました。慰謝料を請求されたら減額されますか?
セックスレスの事情は減額要因として考慮される場合がありますが、「浮気が正当化される」わけではありません。減額の幅はケースバイケースで、セックスレスの期間、拒否の理由、あなたがセックスレスの改善に向けてどのような努力をしたかなどが考慮されます。
Q. パートナーがセックスレスで浮気もしている場合、両方を理由に離婚・慰謝料請求できますか?
可能です。セックスレスと浮気の両方を離婚原因として主張でき、慰謝料も請求できます。特にセックスレスと浮気が並行している場合は、「婚姻関係を維持する意思がない」として慰謝料が増額される可能性もあります。
Q. セックスレスかどうかを裁判で証明するにはどうすればいいですか?
セックスレスの証明は容易ではありませんが、以下が証拠になりえます。日記やメモ(拒否された日時の記録)、LINEやメールで「したくない」と言われたやり取り、夫婦カウンセラーや医師の証言、別寝室で就寝していることの証拠(写真や引っ越し業者の記録など)が挙げられます。
Q. セックスレスが原因で精神的に辛いです。浮気を疑う前にまず何をすべきですか?
まずパートナーに率直に気持ちを伝えてみてください。それでも改善されない場合は、夫婦カウンセリングの利用を検討してください。パートナーの浮気を疑う具体的な兆候がある場合は、自分で調べるのではなく、探偵の無料相談で客観的な判断を仰ぐのが安全です。
浮気の悩み、一人で抱え込まないでください。
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